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京橋には「老舗」と言われるお店が数々あります。その中でも『桃六』は国民的俳優や近隣で働くビジネスパーソン、地元の方や子供達が足を運ぶ名店です。『桃六』の創業はなんと明治2年(1872年)。150年以上も京橋の地に根差し、京橋の人々に愛され続けています。店名の由来は、創業者である林六兵衛氏の名前から。現在は、5代目の林登美雄さんがその味を守っています。

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店内に入ると、まず目に飛び込んでくるのがケヤキの一枚板に彫られた桃太郎の看板。ひと目で歴史を感じるこの看板は、1923年の関東大震災による火災から、そして1945年の東京大空襲の戦火をも逃れた桃六の宝で、老舗の風格を醸し出しています。
また、『桃六』にはもう一つの宝があります。2016年に取材に伺った際に、現在の店主・林登美雄さんのお母様である林房子さんから代々伝わる幟を見せていただきました。

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「これは創業当時のものと言われています。昔はキレイに色がついていたのですよ。明治時代、京橋のこの辺りは中橋南鞘町(みなみさやちょう)という地名で呼ばれていたので、その地名が染め抜かれているのです。これも私たちの宝物です。」(林房子さん)

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店内に漂う甘いやさしい香りは、名物のどら焼き「一と声(ひとこえ)」(つぶあん210円・栗入り210円・梅入り220円)。皮は毎日400個分、800枚を手作業で焼いています。
「午後には焼き上がるので、そのタイミングでご来店いただき、焼き立てをお買い求めになるお客様もいます。焼き立ては表面がカリッとしていて、1日寝かせるとしっとり。どちらの味わいもお楽しみいただけます。」(林登美雄さん)

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歌舞伎座に近い立地のため劇場からの注文も多く、歌舞伎の“大向う”にちなんで「一と声」と名付けられました。2012年に亡くなった俳優の森光子さん(享年92歳)が国民栄誉賞を受賞したとき、このどら焼きを関係者に贈ったそうです。
「最近は外国人観光客の方も増えてきましたがどら焼きは人気ですね。『ドラえもん』は海外でも人気なので、日本のお菓子としてよく知られているようです。」(林登美雄さん)

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また、和菓子としては珍しい、あんドーナツ「沖の石」(230円)も人気商品です。最近の流行なのかと思いきや、実は60年ほど前に先代が作り始めたとか。波に揉まれて丸くなった沖合の石のように、まんまるでかわいらしいお菓子です。

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どら焼きの皮だけでなく、『桃六』の和菓子に使われるあんこやお餅は手作業で作られています。お餅は毎日、臼と杵で搗いているそう。

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「和菓子は生き物ですから、季節の変化を感じながら、水加減などを調整し、ベストな味を引き出しています。道具も使っていますが、どれも私たちの手になじんだものばかり。最新式で30年前のものなんですよ(笑)。お団子、大福などの生和菓子は、今日つくって、今日食べるものだけを製造して販売しています。もちろん、保存料などは一切使っていませんから、安心してお召し上がりいただけます。」(林登美雄さん)

長い歴史を持つ『桃六』ですが、伝統を守る一方で変化するお客様のニーズに応え、さまざまな商品を展開しています。たとえば春に販売する桜餅は、関東風の「長命寺」と関西風の「道明寺」の両方が並びます。
「当初は関東風だけでしたが、『関西風はないの?』と聞かれることがありました。東京は日本中の人が集まる街です。一つのものにこだわらず、さまざまな変化を取り入れることが、お客様に喜んでいただけることだと考えています。」(林登美雄さん)

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「和菓子は、季節感が大切です。お正月は餅菓子、春の桜餅やいちご大福、夏はわらび餅、秋はおはぎや栗ようかん、お月見団子。おはぎはお彼岸の入りから明けまでしか販売していません。季節を感じながら、お菓子を召し上がっていただければと思います。」(林登美雄さん)

自宅で家族とホッとするひとときのお供に、また大切な人への贈り物に、『桃六』の和菓子と共に、季節を感じながら甘い時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

INFORMATION

名称 桃六
住所
電話番号 03-3561-1746
営業時間 9:30~17:00
定休日 土曜日・日曜日・祝日
カード 不可
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