Kyobashi TIMES

東京駅から徒歩5分、京橋のビジネスパーソンに愛され、今年開店10年目を迎えた、居酒屋『帰農庵 時代おくれ』。店名に“農”という字があるように、ここは野菜をたっぷりと食べられるお店です。
「一口食べればわかりますよ」と切りたてのカブを出す料理長・塩野暢久さん。つまんでみると、みずみずしく、雑味がなく、食べていて心地よい。塩野さんは青果市場で働いていた経験があり、野菜の目利きでもあります。
「全国各地の契約農家さんから毎日のように届いているので、新鮮でピカピカしていますよね。この野菜は生で何もつけずに食べてもおいしい。京橋は、男性のお客様が多いのですが、野菜が苦手とおっしゃる方が多かった。でも、ウチの野菜を召し上がると、好きになってくださる。やはり、畑に行き、農家さんの考え方、土壌の作り方などから関わっています。大切に育てられた野菜だからこそ、ハッとするほど美味しいのだと思います。」
野菜の産地は、町を上げて有機栽培に取り組んでいる、宮崎県の綾町や、千葉県の山武市ほか、広範囲にわたります。タテに長い日本列島の“ベストな旬野菜”を味わえることも特徴です。

目にも鮮やかな、『厳選野菜の盛り合わせ』（4人分）2,500円。

産地直送の『たけのこの刺身』1,980円。

だから、健康診断が近づくと、足を運ぶビジネスパーソンも少なくないとか。「ヘルシー志向は高まっており、京橋の皆さまは自分の中で起こる“体の変化”に敏感です。ここで新鮮な野菜を食べた翌日に、体がスッキリしたとお話しされる方も多いです。私達は、野菜料理だけでなく、お肉もお魚も扱っていますが、この街のお客様は“本物”を知っています。だから、魚……例えば、ブリ、ハマチ、クエ、タイなどは天然のものを使い、化学調味料は一切使いません。実際に“これはいいな”と思う素材を出すと、おいしかった、と言ってくださる。調理場とお客様の距離が近く、お互いに本物を楽しめる。この距離感は、京橋ならではと感じます。」
お客様の反応をダイレクトに感じるからこそ、素材選びにも力が入るのだとか。野菜がますます美味しくなる春。これから初夏にかけてのオススメメニューを教えて頂きました。「たけのこ、アスパラ、山菜もまだありますね……山菜は、秋田県北秋田市の白神山地から届きます。山菜取りの名人が、“木の芽”や“コシアブラ”など、なかなか東京には来ないものを送ってくれるんです。その独特の香りや苦みを生かした天麩羅、おひたしは絶品ですよ。」

他にも、看板メニューである、『厳選野菜の盛り合わせ』はその日入荷した野菜を料理長が厳選して提供する人気の逸品。「素材そのものを味わって頂きたい」との思いから、なるべく手を加えない生の状態で提供されています。添えられたマヨネーズを使わずにそのまま食べる方が多いのだとか。また、毎朝京都から取り寄せている『京都・京錦庵のおぼろ豆腐』も、濃厚な味わいで女性客にも人気です。

『飛露喜』『喜和鳥』ほか、人気で手に入りにくい日本酒を、適正な値段で提供。

お店に入ると、日本の農家を思わせる店内のインテリアがいい味を出していて、実家に帰って来たようにホッとします。掘りごたつでゆっくりとくつろぐお客さんも多いのだとか。
「京橋にはおしゃれでスタイリッシュなお店がたくさんあるのに、こうして皆さんが足を運んでくださるのは、素朴な雰囲気だからでしょうか。半個室もあるので、よく接待にも使っていただいています。この雰囲気で、超一級の野菜や魚を使った料理と、稀少な日本酒を、適正な価格で提供し続ける……この積み重ねで、京橋の方々からかわいがっていただいていると感じます。」
来るたびに、美味しい野菜との驚きの出会いがある『帰農庵　時代おくれ』。これからは野菜のハイシーズンを迎えます。毎週行っても飽きないお店で、身も心も軽くなるお酒をどうぞ。