インタビュー

江戸文化の象徴「山王祭」にかける思い

京橋一の部連合町会

2016.06.03

江戸の天下祭り「山王祭」で土地の氏神様に感謝を捧げる

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山王祭は江戸時代より、歴代の将軍が上覧拝礼する「天下祭」として盛大に行われてきました。江戸三大祭りの筆頭として、さらに京都の祇園祭・大阪の天神祭と共に、日本三大祭りの一つとしても知られています。
氏子区域は昔から「神輿深川、山車神田、だだっ広いが山王様」と言われるように、九段から丸の内にかけての旧麹町地区と日本橋南部、京橋、銀座西部を含む広大な地域にわたっており、各町の華やかな山車の行列が有名でした。今では山車ではなく、町神輿が氏子域内を巡幸するようになりました。京橋から日本橋まで中央通りを神輿が練り歩く「下町連合渡御」は必見です。

私たち、京橋一の部連合町会は京橋11町会(京橋一丁目東西、二丁目東西、三丁目と宝町一丁目、二丁目、三丁目、八重洲二丁目北、中、南)にお住いの方や京橋を拠点としている企業の方々から構成されています。山王祭に関しては、京橋の各町会はもちろんの事、日本橋、茅場町、八丁堀などの近隣地区との連携、新年会など様々な機会での交流会の実施、下町連合渡御の実施や小冊子の作成等の広報や安心・安全な祭りとする為の警備など運営を担っています。
各町会での祭りの準備は本当に大変で、祭りが終わった瞬間から次の祭りの準備が始まります。半年以上前からは、毎週末集まって、様々なことを議論しています。今回は勉強会を開催し、皆でアイデアを出し合いながら進めていくことにしました。私たちは、それを“アイデアソン”と呼んでいます。山王祭を開催するにあたり、神輿を担ぐ参加者の安心・安全の確保について、また、この文化を周知させ、祭りを盛り上げるための広報についても考えました。例えば、祭りに関するパンフレットを作成したり、企業の社内広報紙に取り上げて頂くなどの新たな試みを行ったことで、多くの方に知って頂くきっかけになったのではないかと思います。

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江戸から継承されてきた町神輿の文化。今年は京橋二丁目西の神輿も30年ぶりに復活。

山王祭はこれまで、戦災や都市化による人口減少による祭りの担い手不足など様々な困難を乗り越えてきました。以前は上町・中町・下町の3エリアが神輿を出していましたが、今では上町と私たち下町のみになっています。また、当時使っていた山車も、現代では電線などに引っ掛かるなど交通面の問題もあり、もう少し背の低い神輿に代わっています。具体的には戦後の昭和27年、祭禁止令が解除されて以降、各地域で神輿を出すようになったという歴史があります。当時の山車が使われていた山王祭は、実際に見たわけではありませんが、想像できない程の迫力があったと思います。

現代の京橋はビジネスエリアというイメージが付いていますが、昔は職人町でした。“南大工町”、“炭町”、“畳町”と呼ばれていた地域もあるんですよ。写真をみると、当時はこの地域にも、子どもがたくさんいたことがわかります。住民が少なくなるにつれて、神輿を出すのも非常に苦労するようになりました。実際にこれまで八重洲エリアは、人手不足のために神輿を出していません。

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そんな中、新しい動きも出てきています。今年はなんといっても京橋二丁目西の神輿が30年ぶりに復活します。30年の間には当該地区の再開発もあり、神輿の準備が前に進まない時期もありましたが、一方で以前よりも地域に拠点を置く企業様の協力をいただけるようになり、予算と人手の確保ができたことが、この度の復活にとって非常に大きかったと感じています。特に京橋は昼と夜との人口に差があり、人手に関しては特に難しいこともありますが、地域に関わる人々の祭へのご協力が今後も少しずつでも増えていくと、より活気があふれるのではないかと期待しています。これからは住民だけでなく、地域で働く人とも手を携えあっていく。そんな新しい町神輿の在り方があるのではないかと考えています。多くの方に興味を持って頂いて、日本の文化の価値を感じて頂きたいです。きっと今年は新しいスタートになりますよ。

山王祭見どころその1
京橋二丁目西神輿の宮入( 6月11日14~16時頃 )

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今年の祭りの見どころはなんと言っても“京橋二丁目西神輿の宮入”ですね。赤坂の日枝神社へ宮入した町会は距離や労力が非常に掛かるため、数えるほどしかなく、今回は30年ぶりに神輿が復活するということもあり、宮入を実施することとしました。次回があるかもわからないですし、悔いの無いようにやらせていただくつもりです。そうは言っても初めてのことで、色々と不安はありますが、皆の思いが詰まった行事になると確信しています。男坂を神輿が威勢よく登っていく様は見ごたえ十分だと思いますよ。
さらに今年は、茅場町にある摂社から神輿7基が一斉に宮出しを行います。正月でさえも参拝客が少なく、寂しくなってしまった時期もありましたが、山王祭を通じて、場所が認知されるようになり、最近ではイベントなどを実施して少しずつ盛り上がりを取り戻してきています。祭りを通して、「こんな隠れたスポットがあったんだ。」と知って頂き、認知がさらに広がっていったら嬉しいですね。

山王祭見どころその2
下町連合渡御( 6月12日9~14時頃 )

中央通りで15基が一斉に連合する「下町連合渡御」も、非常に見応えがあります。最初に7基が摂社で一斉に宮出ししたあと、八丁堀を経由して合流し、ジワジワと大きな連合となり、中央通りの京橋で集結します。そして今回は、連合の最後に山車が付くところも見どころの一つ。千葉県の佐倉に引き渡していた山車が帰ってくるのです。山車の巡行が不可能になり、神輿文化に代わって以来はじめてのこと。迫力が違いますから、是非見て頂きたいですね。

祭りは見るだけでも楽しいですが、神輿も担いでもらいたいです。やはり肌で感じていただくのが一番だと思いますし、今住んでいる、勤めている地域をもっと好きになって頂けるはずです。地域で働かれている方は、それぞれの町会にお声掛けくだされば、参加することも可能です。お仕事帰りに神輿を担ぐというのも非日常的で面白いですし、お気軽に足を運んでくださればと思います。

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写真:前列左から、田中氏(京橋三丁目)、冨田氏(京橋二丁目西)、西野氏・関口氏(京橋一丁目)、後列左から、細田氏・実方氏(京橋二丁目東)、真野氏(京橋二丁目西)、青木氏(京橋二丁目東)

山王祭の関連Webサイト

神幸祭
http://www.tenkamatsuri.jp/sairei/junko.html
下町連合渡御
http://www.tenkamatsuri.jp/tiiki/

PROFILE

京橋一の部連合町会
京橋11町会(京橋一丁目東西、二丁目東西、三丁目と宝町一丁目、二丁目、三丁目、八重洲二丁目北、中、南)にお住まいの方、京橋を拠点としている企業の方などより構成。「何かあったときに近くで助け合えるように、近所で互いに声をかけられるように」という趣旨で、1993年の浩宮皇太子殿下ご成婚の際に神輿を出したことを契機に発足。主な活動としては、祭礼や納涼会の取りしきりのほか、毎月と歳末の防犯パトロールなどを行っている。

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