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ほうき一筋187年!白木屋伝兵衛商店が
江戸の人々に支持された理由とは

2017.03.08 other

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老舗企業が多く集まる、東京・京橋エリアでも、天保元年(1830年)創業の長い歴史を持つ、白木屋伝兵衛商店。掃除道具を製造することおよそ200年。洗練を重ねた美しい江戸ほうきを、販売し続けています。お店に入ると、畳の香りを思わせるほうき素材の清々しい香りに包まれます。そして、壁には芸術レベルに編みこまれた江戸ほうきがズラリ。このほうきで畳を掃除すると、畳がツヤツヤになって清廉な雰囲気に包まれると、リピーターも多数。神社仏閣でも使われているのも納得です。中には数万円のものもあり、一生モノとしての風格を漂わせています。

「嫁入り道具として購入した何十年も使い込まれた江戸ほうきを、メンテナンスに持ってきてくださる方もいます。私達のほうきは、筑波山のふもとの農家で育てられたホウキモロコシ(イネ科の多年草)という植物素材を1本1本、コシ、やわらかさ、しなり具合を確かめて吟味して、適材適所に使用しています。だから、長い時間お使いいただけるのだと感じています。」(広報担当・高野純一さん)

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なぜ、京橋の地にお店を構えたのでしょうか。その起源も伺いました。「江戸時代に、ここに店を構えた理由は水運の要所だったから。ほうきの素材が手に入りやすいので、この地を選んだと伝えられています。ほかにも多くのほうきの専門店があったそうですが、現在まで残っているのはウチだけですね。」

200年近くにわたりこの地で商売を続けてきたのはなぜなのでしょうか。「ほうきは職人さんが手作業で作ります。多くの商店は、江戸時代から明治、大正、昭和の半ばまで彼らがおさめたものを買い取って終わりというスタイルだったと聞いています。ですから職人さんは、病気やけがでほうきが作れなければ、生活が成り立たなくなります。しかし、私達は職人さんたちに、今の会社員のような社会保障システムを作り、いいほうきを安心して作れる体制に整えました。その信頼関係があったからこそ、今日まで続けられたのだと感じています。」

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京橋の街で商売を続けているからこそ、ほうきは掃除道具の壁を越えて、さまざまな使い方がされるようになったとか。「かつて、ほうきは生活必需品でしたが、50年ほど前の高度経済成長期に家庭に掃除機が浸透しました。それでも、手軽な掃除道具として、多くの人に使い続けていただいています。意外な使い方としては、洋服用のブラシとしてほうきを活用すること。京橋には紳士服を仕立てるテーラーが多いのですが、お客様にスーツを長く使っていただけるように、小さめのほうきの製造依頼を受け、これがマルチユースの道具として、多くの人に支持されています。理髪店の方にもお使いいただいていますね。」
実際にこの小さ目サイズのほうきを使ってみると、洋服も気持ちもさっぱりします。てのひらにしっくりなじむから、デスクの周りなどちょっとした掃除道具としても最適。ほうきを使うと、なぜか気持ちまで清々しくなるのは不思議です。

「ほうきは、かつて神事の道具だったようです。奈良の正倉院にも孝謙天皇が蚕部屋を掃き、豊作を祈るために使ったがおさめられているんですよ。おまじないとしても考えられており、妊婦さんのお腹を新しいほうきでなでると安産になる、とか、ほうきの柄を下にして立てておくと嫌な人を家に入れないという話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。」

白木屋伝兵衛商店のほうきは、熟練の職人技が光っています。店内には、江戸ほうきの編み方のサンプルがあり、美しく編みこまれたほうきに、江戸の粋を感じます。
「ほうきはありふれたものですから、最近まで誰も記録して残そうとはしませんでした。職人技が消えてしまうのは惜しいと、こうしてサンプルとして残し、後世に技を伝えていけたらと考えています。これらのほうきは素材を3時間くらい水につけ、湿潤な状態にしてから、少しずつ束ねて作っていきます。最後に左右と真ん中の3つの大きな束をまとめて締めるのを胴締めといい、このあと、柄を打ち込み、付け根の部分を編み上げ、そして穂先を切って整えて完成。長く使ううちに、穂先にクセがついて着たら、少しずつ切りそろえて使ってください。」まずは座敷用に。そして使い減ってきたら、洗面所やお手洗いに。さらに減ったら玄関用として、段々下におろして使っていく良さがあります。1本のほうきが、20年、30年と使い続けられる。家族の歴史と共に歩める道具として、今も多くの人が、京橋の白木屋伝兵衛商店を訪れています。

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INFORMATION

名称 白木屋伝兵衛商店
住所
電話番号 03-3563-1771
営業時間 月~土10:00~19:00 
定休日 日、祝日
Webサイト http://www.edohouki.com/

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