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音楽が街にあふれる日
京橋エドグランで感じた“熱狂の日”の鼓動|ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2025レポート
2025.06.02 イベント情報

世界最大級のクラシック音楽祭『ラ・フォル・ジュルネ TOKYO』。2025年5月3~5日 の3日間、有楽町・東京エリアを中心に開催されました。京橋エドグランでは、2017年以降 エリアコンサートの一環として、大階段でライブを実施しています(2021・2022年の開催休止期間を除く)。7 回目となる今年は、「京橋エドグランで粋なClassic&JAZZを」と題し、5月3日はクラシック コンサート、5月4日にはジャズコンサートが開催されました。
今回は、5月3日のクラシックコンサートの様子をレポートします!
■フランスの港町で誕生したクラシック音楽祭。東京開催は20周年
『ラ・フォル・ジュルネ』は1995年、フランス西部の港町ナントで誕生したクラシック音楽祭です。 毎年テーマとなる作曲家やジャンルを設定し、複数の会場で朝から晩までコンサートが開催されます。ラ・フォル・ジュルネとは、フランス語で「熱狂の日」。その名の通り、多くの人が音楽に熱狂するイベントです。
その人気は海外にも広まり、2005年には『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン』として東京に上陸。2018年には『ラ・フォル・ジュルネ TOKYO』と名前を変えました。開催20年を迎える今年のテーマは、「Mémoires(メモワール) ――音楽の時空旅行」。5月3~5日 の3日間、東京国際フォーラムでは有料コンサートが、京橋をはじめ大手町・丸の内・有楽町、東京駅、銀座、八重洲、日比谷、みなとみらいでは無料のエリアコンサートが開かれ、合計約193,000人が来場する一大イベントとなりました。

■京橋エドグランで粋なClassic&JAZZを
京橋エドグランで行われる5月3日のクラシックコンサート に出演するのは、ヴァイオリニストの高雄敦子(たかおあつこ)さんと、ピアニストの加納裕生野(かのうゆきの)さん。高雄さんは2019年から、加納さんは2023年から京橋エドグランのコンサートに出演しています。

高雄さんは、2010年に英国王立音楽院を首席で卒業。東京国立博物館法隆寺宝物館や京都の清水寺、奈良の法隆寺や各国大使館などでも演奏を行い、「日本の文化、精神を海外へ発信する活動を行う演奏家」として注目されているヴァイオリニストです。
加納さんも、高雄さんと同じくイギリスに留学し、英国王立音楽院を首席で卒業。現在はピアノ講師をしながら、数々のコンサートに出演しています。
このような二人が奏でるクラシックコンサートを無料で聴けるなんて、なんて贅沢なイベントなのでしょう。
■大階段はあっという間に満員に!思わず足を止める人も
当日は朝から、京橋エドグランの大階段 の下でリハーサルが行われました。ラフなスタイルで、スタッフと談笑しながらリハーサルを進める高雄さんと加納さん。コンサートのことを知らずに通りかかった人は、突如響き渡った音楽に、「なんだろう?」と覗き込んだり、拍手をしたりと 会場は和やかな雰囲気に包まれていました。
そして開演1時間前より、一部座席 の整理券を配布。多くの人がこの整理券目当てに訪れ、あっという間に整理券はなくなってしまいました。でも、整理券不要の自由席もたくさんご用意していたので、どうぞご安心を!

開演30分前からは 、自由席を利用する人たちが大階段に座り始めました。中には敷物や座布団を用意している人も。なるほど、『ラ・フォル・ジュルネ 』の楽しみ方を心得たリピーターのようです。

開演5分前には、通路ギリギリまで観客がギッシリ。座れない人は、吹き抜けの上から見下ろしたり、エスカレーターの脇に立ち止まっていたりと、パブリックスペースならではの自由な観覧スタイル 。ベビーカーを押したファミリーは、中央広場のソファやベンチに座り、開演を待ちます。
■笑顔と活気に満ちた会場に、伸びやかな音が響き渡る
15時。いよいよ開演!華やかなドレスの高雄さんと加納さんが登場すると、大きな拍手で迎えられました。

思わず目を引き付けられる、パッと花が咲いたような高雄さんの笑顔と明るい声に、観客は皆一瞬で心を奪われたようです。
そして始まる1曲目は、ホルストの「ジュピターより」。「オーケストラのような音の広がりを、ヴァイオリンとピアノで感じて欲しい」という高雄さんのコメント通り、荘厳で伸びやかで、体の芯に響いてくるような素晴らしい演奏でした。

そして、しっとりとしたイギリス民謡の「グリーンスリーブス」、リズミカルな「リベルタンゴ」、哀愁漂う「シンドラーのリスト」、ヴァイオリンの名曲として広く知られる「チャルダッシュ」、ミュージカルファン歓喜の「オペラ座の怪人」と、クラシックファンでなくとも耳馴染みのある曲が次々と演奏されました。

音楽はもちろんのこと、演奏の合間に高雄さんがそれぞれにまつわるエピソードをユーモアを交えて話してくださるので、クラシックの名曲がより一層身近に感じられました。
また、観客の中から指揮者を募り、それに合わせて高雄さんが演奏するという、観客参加型のスペシャルコーナーもあり、手を挙げた3名がステージに立ちました。中でも小さな女の子が指揮棒を振り、それに高雄さんが合わせて演奏する姿が微笑ましく、観客席は笑顔で溢れました。

そして、高雄さんが教えるヴァイオリン教室の生徒さんと、京橋エドグランの北原理事長が篠笛で参加し、葉加瀬太郎の「エトピリカ」と「情熱大陸」を合奏。最後の曲となるエルガーの「威風堂々」には高雄さんが講師を務める「京橋縁カレッジ」の受講生たちも参加し、大きな拍手に包まれてコンサートは終了となりました。

京橋エドグランはパワースポット。人と人とのつながりを、音楽を通して伝えたい
コンサート終了後、高雄さんにお話をうかがいました。
—素敵なコンサートをありがとうございました!高雄さんは2019年から京橋エドグランで演奏されていますが、今年はいかがでしたか?
高雄さん「京橋エドグランの大階段は、風が感じられてとても気持ちが良い場所ですね。MCでもお話しましたが、私にとって京橋エドグランはパワースポットなんです。360度ぐるっと、左右にも上にも空間が広がっていてお客様がいらっしゃって、そのすべてからエネルギーをもらえるように感じています。」
—やはり、コンサートホールでの演奏とは違いますか?
高雄さん「野外ステージは、チケット代がないので、面白くなかったら立ち去ってしまうし、気になったら足を止めていただける。そんな一期一会の出会いが魅力的ですね。」

—京橋エドグランのお客様は、どのような方が多い印象ですか?
高雄さん「2019年から出演しているので、なじみの方も多いのではないでしょうか。また、大階段では普段から様々 なライブが開催されているので、そちらによくいらっしゃる方も多いのかな。温かい方が多いように感じます。普通のコンサートだったら『あっちゃん!』と声をかけていただくことは、まずないですから(笑)。」
—演奏された曲は、クラシックファンでなくても聞いたことのある曲ばかりで楽しめました。セットリストはどのようにして決めたのでしょうか。
高雄さん「お客様に喜んでいただけそうな曲を選びました。クラシックの曲だけだと堅苦しくなるので、手拍子をしてもらえるような曲や、ポピュラーな曲を中心に構成しています。」
—ユーモラスなMCや、観客参加型のイベントも楽しかったです。
高雄さん「私のコンサートは、演奏よりもMCが長いくらいなんですよ(笑)。観客に指揮をしてもらうコーナーも、何度か行っています。みなさんに少しでも親しみをもっていただけるよう、工夫をしています。」
—生徒さんとの合奏も素敵でした。
高雄さん「今年は初めて『京橋縁カレッジ』受講生の方にも参加していただきました。受講当初は、『人前で演奏するなんて…』という感じだったのですが、みなさん練習をしていくうちに、『じゃあやりましょう!』と。『京橋縁カレッジ』は、初めて楽器を触るという方も多いのですが、練習後の打ち上げも含めて、みなさんとても楽しんでいただいています。」

—気が早いですが、来年のプランはありますか?
高雄さん「今はAIが、譜面を完璧に弾いたり、過去の名演奏家の演奏を再現したりすることができる時代になってきました。じゃあ、私達人間の役割はなんだろう、と考えたときに、自分のエネルギーをお客様に伝えることかなと感じています。完璧な演奏じゃなくても、音楽を通じてパワーを伝えることで、元気や笑顔になっていただきたい。人間同士ならではコミュニケーションを、音楽を通じてできたらいいな、と思っています。」
クラシックはホールで聴くもの、という先入観をくつがえす『街なかクラシック』。街と人が一体となり、暮らしの一部として音楽を楽しむ、素敵な時間を過ごすことができました。
来年の『ラ・フォル・ジュルネ TOKYO』も今からとても楽しみです!
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