Kyobashi TIMES

京橋一丁目に「京橋焼き鳥ストリート」と呼ばれる一角があると聞いて、心を躍らせながら目的地へむかいました。立ち並ぶ名店の中から選んだのは、昭和23年創業の老舗「栄一」。焼き鳥というと、いまやコンビニの店頭にも並ぶほど日本人になじみ深い食べ物ですが、その形態は赤ちょうちん系の町の居酒屋から全国各地の地鶏を扱う高級店、ワインと楽しむおしゃれな焼き鳥店などさまざま。ただ、焼肉に比べ庶民派で、親しみやすい印象の食べ物であることは共通するのでは。
ところで「やきとり」と「焼き鳥」の違いをご存知でしょうか。例えば、全国的にみて「やきとり」店が多いのは福岡県と言われています。やきとり屋以外でも、ラーメンの屋台でも「やきとり」がメニューにありますが、出されるのは鶏ばかりでなく、豚肉だったり牛肉だったりします。例にあげた福岡県だけではなく、全国各地でさまざまな肉や野菜を串に刺して焼いているものの総称を「やきとり」、鶏だけを素材とするものが「焼き鳥」ととらえられているようです。
「栄一」は、看板に「やき鳥」とありますが、メニュー名は「焼鳥丼」。こちらの定義を知るために、いざ実食。ランチタイムのメニューは「焼鳥丼」1,150円（税込）と「親子丼」900円（税込）の2種類。100円増しで大盛にすることもできます。11時半の開店時に1番乗りで入店、地下のテーブル席へ案内されました。

地下は4名用のテーブル席が4卓と奥には個室が2室。開店するなりあっという間に満席

席に座るとすぐに、温かいほうじ茶とお新香が出されました。刻んだ大葉が入ったさわやかなお新香は箸休めにぴったりです。1階では、オーダーが入ってから焼き始めるようで、炭のはじける音や香りが伝わってきます。

1階席は、カウンター7席と4名かけのテーブル３卓でこちらもあっという間に満席です。

待つこと７～8分で、焼鳥丼と親子丼がほぼ同時に運ばれてきました。

焼鳥丼には、うずらの卵、つくね、もも、レバー、砂肝が焼いた後で串から外され、ご飯の上にダイナミックに乗せられてきます。鶏肉以外の素材をともに焼いているので、「焼き鳥」と定義するのが正しいかもしれません。こんがりした焦げ目がたまらなくおいしそうです。うずらのたまごはしっかり焼けているにもかかわらず、表面が固くならず黄身がパサつくこともなく、ほっくり焼き上げられています。つくねもふんわりと柔らかく、うまみが口いっぱいに広がります。柔らかく焼き上げられたもも肉も、万人ウケするおいしさ。砂肝はコリコリとした独特の食感はあるものの筋っぽさは残っておらず、下処理の技はさすがです。レバーは、おどろくほどしっとり滑らかで、まったく臭みもありません。レバーが苦手な方にもおすすめです。甘すぎないすっきりとしたタレがしみ込んだご飯には、刻みのりがかけられています。セットの鶏スープも、それだけでも食べられるくらいのおいしさで、鶏のうまみが溶け込んだシンプルな塩味で丼との相性は抜群。丼物というとカツ丼や牛丼を思い浮かべ、焼鳥丼はあまり馴染みがないという認識だったのですが、今回「栄一」の焼鳥丼をいただいてみて、その考えが浅はかだったことを思い知りました。並んでもたべたい、並んだ甲斐があったと思わせてくれる逸品です。

そして、親子丼。ふわとろ玉子の親子丼を出す店が多くなっている中、「栄一」ではしっかりと火の通った昔ながらの親子丼……と思いきや、真ん中の三つ葉の下には、とろ～んとした黄身が隠されていて、なんだか少し得したような気持ちになります。
玉子がたっぷりと使われた親子丼は、出汁の利いたきいた柔らかい味で、最初はそのままで、途中で黄身を少しずつ混ぜることで濃厚な味わいへと変化させることができ、最後まで飽きることなく楽しめます。店員さんが、何度もお茶を足しに来てくださったり、「混んでいて相席になってごめんなさいね」と声をかけてくださったり、やさしい気遣いも嬉しいです。

食事を済ませて1階の出口へ向かうと、カウンター越しに香ばしい焼き鳥の香りが鼻腔をくすぐり、思わずもう少し食べたいような気持ちに駆られます。夜はコースのみのメニューで、1階と地下の他に2階には座敷があり、宴会にも使えるそう。夜はまた違った雰囲気となる、この「京橋焼き鳥ストリート」。用途によって使い分けてみてはいかがでしょうか？

会計を済ませて引き戸をあけると、外にはまだ席が空くのを待つ多くの人たちの姿がありました。

今回食べたランチ
焼鳥丼　1,150円（税込）
親子丼　900円（税込）

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