街づくりニュース

美術の街・京橋のアートの祭典『東京 アート アンティーク』vol.1

2016.07.05 イベント情報

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京橋から日本橋に続く「東仲通り」は戦前から美術商の集まる町で、「京橋美術骨董通り」と呼ばれています。現在でも150を超えるギャラリーなどが軒を連ね、毎年春には、骨董通りを中心に約80の美術店が参加し、地域型アートイベント『東京 アート アンティーク』が開催されています。「普段敷居が高く感じるギャラリーを気軽に巡ることができる」「初心者のみならず、古美術愛好家や歴史好きな方なども楽しめる」と、初心者から上級者まで多くの層の人々を魅了し、注目を集めています。
世代や国内外を問わず、多くの人々が訪れるこのイベントを運営する、林田画廊・林田泰尚さん(以下・林田さん)と、ギャラリーこちゅうきょ・伊藤潔史さん(以下・伊藤さん)に、美術の街・京橋の歴史と魅力、イベントについて語っていただきました。

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画廊といえば「銀座の画廊」という様なイメージがありますが、京橋にも多くの美術店がありますね。

林田 そうですね。やはり銀座は日本一の画廊街であることは間違いありませんが、一時期に比べ、路面に店を構えているところがとても少なくなりました。
伊藤 比較的、京橋には古美術系のお店が多いですね。また東仲通りつまり骨董通りを中心に、一階には美術店が軒を連ねていて、ウィンドーには様々な作品が街を彩っています。

骨董通りはいつ頃から美術店が多く集まるようになったのでしょうか?

伊藤 大正期にはかなりの数の店があったと言われています。
林田 北大路魯山人(1883-1959年)が大雅堂美術店を構え、その二階で美食倶楽部を開いたのも京橋2丁目ですね。
伊藤 ほかにも多くの文化人たちが美術品を愛し京橋を訪れていました。

どのような方々がいらしていたのですか?

伊藤 有名な方ですと、川端康成先生や小林秀雄先生、白洲正子先生などの文人から、梅原龍三郎先生や小林古径先生などの画家の方々もよくいらしていたと聞いています。
林田 皆さんが行かれる首都圏の美術館も明治大正期から京橋周辺の美術商と関わりが深いところも多いですよね。それだけレベルの高い人、作品が集まってきた街だったのでしょう。

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そんな歴史のある京橋で東京 アート アンティーク』が発足した時のお話を伺わせてください。

伊藤 1998年に有志が集まり、「日本橋京橋美術骨董祭り」というイベントを立ち上げたのが始まりです。
林田 バブル崩壊とIT化との狭間の時期ですよね。
伊藤 今でこそ、様々なアートフェアが各地で開催されていますが、それぞれの趣向で商売をしていた美術店がまとまって一つのイベントを行うというのは、当時はとても画期的でした。
林田 最初は「顧客を他店に取られるようなもの」と捉える方も多くいて、今の半分ほどの規模でした。それがインターネットの普及によって、急速に情報化が進み、「顧客の囲い込みよりもより広く情報を発信していこう」という機運に変わってきたのかと思います。
伊藤 そこで私たちの強みとはなにかと考えたとき、街中に美術店が点在し、質の高い作品がジャンルを問わず集積している、世界でも稀な地域であると思ったのです。
林田 歩いて回れる範囲にこれだけの美術店がある地域って、あまり聞かないですよね。その強みを活かして、美術の街・京橋をもっと広く多くの方々に知っていただきこうと、2010年から実行委員の若返りを図り、名称を『東京 アート アンティーク』に変更し、2016年に7回目の開催をいたしました。

東京 アート アンティーク』になり何か変わったのですか?

林田 各参加店にお願いをして、会期の時だけの特別展示を企画してもらったり、ゲストをお招きしての講演会や、実際に制作体験が出来るワークショップなど初めての方でも楽しみやすい企画を心がけました。
伊藤 今年は初めてチャリティ入札会と美術館の学芸員の先生をお招きして座談会を開催しました。お蔭さまで評判もまずまずだったようで、実行委員一同ほっとしていますよ(笑)
林田 様々な媒体への広報活動も積極的に行っていて、初めての参加される方々が毎年大変大勢いらしていただけるのがとても嬉しいですね。ただ、まだまだ発信の力が弱いと思っていますので、多くの方々に美術の街・京橋を知っていただき、気軽に訪ねていただきたいですね。

見るだけでも大丈夫ですか?

林田 例えば服や鞄を買いに出掛けても、気に入るものがなければ買いませんよね?美術品も同じですよ。まずは沢山のお店で色々ご覧になってご自分の趣向にあうお店探しをされるのが初めはいいかもしれませんね。その中でご自身のイメージをお伝えいただければ、満足出来る作品に巡り合えるかと思います。
伊藤 私たちは自分の趣向で作品を仕入れて紹介させていただいているので、同じジャンルの作品を扱うお店でも店内の作りから作品の見せ方まで、それぞれの思いが色濃く出ます。そんなところを実際見て感じていただくのも、楽しみの一つかもしれません。
林田 美術品の鑑賞の仕方のようなマニュアルはありません。難しい知識よりも、“作品の中の自分が好きなところ”を探してあげることが大切かと思いますよ。「私はここが好き」「僕はこの色が……。」なんて会話が始まったら、とても楽しい時間が広がりませんか?
伊藤 世の中には何十億もするような美術品もありますが、あくまで価格は価格です。価格は需要と供給で、絶えず変動するものですから、自分だけの価値ある作品と巡り合う、それをお手伝いするのが私たち美術商の役割ですし、『東京 アート アンティーク』がそんな素敵な機会になればと切に願っております。
林田 『東京 アート アンティーク2016』は終わったばかりですが、来年に向けて走り出しています。もっと楽しんでいただけるような企画を練っているところですので、楽しみにしていただければ嬉しいです。

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『東京 アート アンティーク2016』は過去最高の動員を記録。イベント終了後もパンフレットを片手に京橋の美術店巡りをされている方も多数いらっしゃるそうです。人生を彩る作品と巡り合える美術の街・京橋。あなたもぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。

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